時間は伸び縮みする!:astronomy014

走馬灯現象

事務・受付担当の「さいたまあちゃん」です。

 

前回は、ブランコ靴飛ばしという遊びについて解説しました。

今回は、再び天文学のシリーズに戻り、前々回のタイムマシンの仕組みにつながる解説をしたいと思います。

 

私の1番最初のブログに走馬灯現象の体験談を書きました。

不思議な体験

走馬灯現象は、アニメ鬼滅の刃でもいろいろな場面で頻繁に登場しますが、私自身も体験しているので、実際に起こる不思議な現象です。

数秒という非常に短い間に、まるで時が止まっているかのように周囲がスローになり、沢山の思考を巡らせることが出来ました

私の場合は、5分の1~10分の1くらいスローになったように感じました。

 

走馬灯現象は極端な事例でしたが、そこまで行かなくとも「楽しい時間は短く感じる」とか「辛い時間は長く感じる」や、車を運転した時に高速道路から一般道へ進むと、周囲が普段よりスローに見えることが良く起こります。

しかし、走馬灯現象も含めて、これらは実際に時間がゆっくりになっているわけではなく、脳の錯覚に過ぎない現象です。

ただし、走馬灯現象が起こると、沢山の思考を巡らせることによって適切な受け身などが可能になり、九死に一生を得る効果があったのは実体験済みです。

本当に時間の速さは変わる?

では、本当に時間の流れの速さは一定なのでしょうか?

結論から申しますと、上記の例とは無関係ですが、アインシュタインの相対性理論によって一定ではない事がわかっています。

アインシュタインがこの理論を発見した時代(今から約107年前)は、計測機器の精度が低いため、簡単に実験はできませんでしたが、アインシュタインはこれを頭の中だけで思考実験することによって発見したものです。(凄いですよね)

現在では機器の精度が上がり、同じ地球上でさえ厳密的には場所や状況によって時間の進む速さは違う事が実験でもわかっています。

例えば、3000年に1秒しか狂わないという原子時計を2つ用意し、片方をジェット機に乗せてしばらく飛んで再び2つの時計の時刻を比較すると、わずかにジェット機に積んだ時計の方が遅れます。(特殊相対性理論による時間の遅れ=移動速度が速いほど時間が遅く流れる)

または、300億年に1秒しか狂わないという光格子時計を使って、スカイツリーのてっぺんと地上にそれぞれ時計をしばらく置いて計測すると、地上の時計の方が遅れます。(一般相対性理論による時間の遅れ=重力が強いほど時間が遅く流れる)

このように地球上では、高性能の時計で比較しないとその差がわからないくらい微妙な差ですが、確かに時間の進み方は一定ではないという事が実証されています。

もっとわかりやすい例

「粒子加速器」という装置をつかって、様々な素粒子を光の速さに近い速度まで加速させることができます。

ジェット機などは、現代科学的に光の速さまで加速できないため、はっきりとした時間の遅れ現象は確認しづらいですが、小さな素粒子は別でそれが可能となるので、もっとわかりやすい大きな差が出ます。

例えば、電子や陽子は寿命が長いですが、π中間子という素粒子は非常に寿命が短く、生成してから1億分の1秒ですぐに崩壊してしまいまが、この装置を使って光の速さ近くまで加速させると、時間の進み方が非常にゆっくりになるので崩壊時間を遅らせ、寿命がなんと一ヵ月まで大きく伸ばすことができます。

これは医療用に応用されていて、例えば癌の放射線治療に応用されています。

補足として、寿命が延びた粒子を当てると患者の寿命が延びるという意味ではなく、粒子の寿命が短いと患者の患部まで届かなかったり、頻繁に生成を続けないといけなくなるので、粒子の寿命を延はずことによって、効率よく照射できる状態=治療として使える状態になるという意味です。

もっと身近な応用例

もう一つの応用例は、GPS=ナビケーションシステムです。

これは普段の私達の日常生活において大変役に立っている身近な機能です。

ナビケーションシステムは人工衛星を使って、自分の位置を計算するものですが、各人工衛星には精度の高い原子時計が積まれています。

 

人工衛星は高い高度を飛んでいるために、地上よりわずかに時間の流れが速くなり(一般相対性理論の効果)、かつ、速く飛んでいるため時間の流れがわずかに遅くなります(特殊相対性理論の効果)。 これらを相殺するとわずかに地上の時間より速く進むので、これを補正して位置を計測します。

これらは、光の速さ近くまで加速できる粒子加速器と違ってわずかな差しか出ませんが、この差を補正しないと、現在地が一日で10kmくらいずれてしまいナビの役割を果たさなくなります。

補足として、ブラックホールなど重力が非常に強い天体の周囲では、時間の遅れがはっきりと表れます。

シュバルツシルト半径(黒い穴に見える光が抜け出せなくなる半径)では、十分離れた場所から観測した場合そこに落下したものが時間が止まって見えますし、その3倍の半径では約10分の8まで時間の進む速さが遅くなります。(実際には遠すぎて現地で観測できないので計算上)

まとめとして

時間の進む速さが場所や状態によって変化する=時間が延び縮みするというのは、人間の直感に反する事で一部では懐疑者がいるほどですが、相対性理論の正しさはあらゆる実験で証明されているので、定説になっています。

では具体的に、なぜ速度によって、時間が伸び縮みするのか(特殊相対性理論について)を次回のブログで解説いたします。

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