太陽は燃えていない!~環境問題:astronomy006

物が燃えるとは?

事務・受付担当の「さいたまあちゃん」です。

前回は、「天の川の正体である銀河系のさらに外側の世界がどのようになっているか?」ついて解説しました。

そして以前に、夜空に輝く星の正体は「恒星」であり、その中でクローズアップして見ることが出来る唯一の恒星が、「太陽」であるという事を解説しました。

今回は、宇宙の果ての話へ進む前に、再び原点に立ち返って「太陽を含む恒星とはそもそも何なのか?」について解説していこうと思います。

それと、これに関連して環境問題についても少し触れます。

 

皆さまもこのような疑問を1度は持った事があると思います。 それは、

宇宙は酸素がないのに何故、太陽は燃えているのか?」です。

これを解説するにあたり、「物が燃えるとはいったいどういう現象なのか?」について考える必要があります。

物が燃えるとは「可燃物が光や熱の発生を伴って、激しく酸素と反応する化学反応(酸化反応)」です。

これは「化学反応」の1つで「燃焼反応」と言います。

ただし、鉄が錆びる時も酸化という化学反応ですが、反応がゆっくりであるため炎は出さないので燃える(燃焼反応)とは言いません。(熱は若干発生しています)

水素は燃える

このような「燃焼反応」はどうしたら起こせるのか?

ですが、その答えは酸素がある場所で、可燃物を発火温度(発火点)まで温度を上げればよいだけです。

例として、水素を燃やす事を考えてみます。

水素は常温では気体ですが、この温度では自然に燃えることはありません。

燃やすには、温度を527℃まで上げる必要があります。 つまり火をつければ燃えます。

炎は1000℃以上あるからです。

つまり、水素の発火温度である527℃を超えさせれば、熱エネルギーで分子が激しく衝突するため、酸素と結びつく分子の組み換えが起きて、組み換え前後で結合エネルギーの差分が熱と光となって炎となり、その温度上昇によって連鎖的に酸素と結びつく化学反応を起こします。(結合エネルギー:原子と原子が結びつくエネルギーであり、分子の種類によって強さが異なる)

これが「燃える」という現象です。

プロパンガスは燃える

日常生活で良く使うガスも燃えます。

プロパンガスの場合は、発火温度が水素よりも低い460℃以上で燃やすことが出来ます。

ガスレンジで火をつける時は、発火装置が瞬間的に460℃以上になるために、燃えます。

この場合も、水素と同じく光や熱を発生させる激しい酸化反応=燃焼反応を起こしています。

空気は燃えない?

補足として、

マッチに火をつけても、空気自体が燃えることがありません

空気の成分は、窒素78%、酸素21%、その他(二酸化炭素、アルゴンなど)1%で構成されていますが、どれも発火温度が存在しません

酸素は燃えるのを助けますが、酸素のみで燃えることはないです。

このように、燃えない物質も存在します

つまり、空気の成分はどれも「不燃物」であるという事です。(酸素は可燃物の燃焼を助けるので「支燃物」という)

空気が燃えたら大変です。

環境問題について

最後の項にも関係するので、環境問題についてちょっと触れておきます。

プロパンガスの場合は、有機物(炭素を含む化合物)のため、燃えると二酸化炭素(CO2)を排出します。

これが、地球温暖化の原因にもなっています。(これに対して水素はCO2を出さないので、クリーンエネルギーと呼ばれます)

プロパンガスに限らず、木片を燃やすのも、ろうそくを燃やすのも炭素が含まれるのでCO2が出ます。

「うちは都市ガスなので良かったな?」と思ったあなた! いやいや、都市ガスの成分の90%は「メタンガス」です。

メタンガスも炭素を含むので、燃えるとCO2が出ますし、その排出量はプロパンガスと比べて大差はないようです。

オール電化で太陽光パネルを併用していればかなり環境には優しいですが、それでも完全とはいえず、発電でまかなえない部分の供給元が、火力発電(燃焼反応)の場合はその段階でCO2を出しますから、完全とはいえません。(完全ではないですが、効果は高い)

原子の構造について

次に、「太陽は燃えているのか?」を解説する前に、予備知識として原子の構造について解説します。

物質をどこまでも細かく分けていくと、もうこれ以上分けたら性質が変化してしまうという限界の最小単位が、分子や原子です。

さらに、原子には「原子核」の周りを「電子」が回っている構造があり、原子核も「陽子」と「中性子」に分けることが出来ます。

電子はマイナス、陽子はプラスの電気を帯びていて(電荷という)全体的にプラマイ0になるように陽子の数と電子の数は、どの原子でも通常は同数になっています(偏りがあるとイオンという状態となる)

水素は原子の中で一番軽く単純な構造であり、陽子の数も電子の数も1個ずつで、原子核が陽子1個で出来ています。

次に単純なのはヘリウムであり、陽子の数も電子の数も2個ずつで、原子核は陽子と中性子が2個ずつで出来ています。(陽子の数で原子の種類が変わる)

原子核には陽子だけでなく中性子という電気的に中性の粒子も存在します。

水素は別として、陽子の数と中性子の数はだいたい近い数となっている場合が通常で、原子の種類によって違います。

中性子の数が通常より多かったり少なかったりする原子も「同位体」と言って存在しますが、その中には不安定で放射線を発するものもあります。

水素やヘリウムの同位体は「重水素(中性子がある水素)」や「ヘリウム3(中性子が1つ少ないヘリウム)」があります。

太陽は燃えていない!

太陽は「水素90%+ヘリウム10%」で出来ていて、図に表すと下記のようになります。

これが太陽(恒星)の中心部で起こっている「核融合」という反応です。

核融合を起こすには、太陽(恒星)の中心部の温度が1000万℃まで上昇する必要があります。

巨大な恒星を人工的に温めることは不可能ですが、恒星の元となる水素が大量にある場合、それらが巨大な重力によって圧縮されると中心部の温度が上がり、この温度に自然に到達できます。

すると、核融合が始まります。

水素やプロパンガスが燃えるのと大きく違う点は、温度が高いためプラズマ状態にあるという点です。

プラズマ状態とは、原子核と電子がばらばらの状態で飛び交っている状態の事で、原子の状態ではない状態です。(温度が上がるに従い、個体→液体→気体→プラズマへと変化)

日常では雷がプラズマ状態です。

図は複雑ですが、簡単に言うと、太陽(恒星)は「核融合反応」によって水素→ヘリウムに変化する反応であり、この過程で光と熱が出ます。

これが太陽が光る理由ですが、これは燃焼反応ではないので「燃える」とは言いません。(燃焼反応のように、分子の組み合わせが変わるのではなく、原子核が融合することによって原子の種類が変わる)

つまり、「太陽は燃えていない」ので酸素を必要としないのです。

****************** 【図の詳細説明】 **********************

水素の原子核である、陽子と陽子が合体(融合)すると、陽子の1つが中性子に変化すると同時に、「ニュートリノ」と「陽電子」が飛び出します。(β+崩壊という)

陽電子はプラスの電荷を持った電子の反物質であるため、通常の電子(マイナスの電荷)と衝突すると対消滅し、ガンマ線という強い光を発します。(これが太陽が光る理由の1つ目)

それと同時に、陽子と中性子が結びついて水素の同位体である「重水素原子核」が誕生し、さらに陽子と融合するとヘリウムの同位体である「ヘリウム3原子核」が誕生し、この時もガンマ線という強い光を発します。(これが太陽が光る理由の2つ目)

最後にヘリウム3原子核」同士が融合すると、「ヘリウム原子核」の誕生と同時に2個の陽子が飛び出し、ヘリウム原子核は蓄積されて、陽子は次の反応に利用されます。(中心部に水素がなくなるまで)

ガンマ線は目に見えない光で、エネルギーが強く生物にとって有害な光(放射線レベル)ですが、太陽の中心部の核融合で発生した後、「核融合が起きていない外側の水素の層」を抜けるまでに、層に邪魔されてまっすぐに進めずジグザクに迷走して、なんと太陽の内部を抜けて外側へ光が出るまでに「数百万年から1千万年」もかかります

そして、その過程で有害なガンマ線の多くは生物にとって優しい「目に見える可視光」や「目に見えない赤外線+紫外線」に変化して(エネルギーが弱まって)、さらに宇宙空間を8分19秒かかって地球に届きます。

したがって、我々が目にする太陽光は、「数百万年から1千万年+8分19秒前の過去」に起きた核融合の光が、今やっと届いたことになります。

太陽が輝く仕組みを2つ応用

太陽や星が輝く仕組みは昔は分かっていませんでしたが、1932年には核融合実験により、膨大なエネルギー放出されることを発見し、その後、太陽や星が水素の核融合反応によって輝いている事が理論的に示され、観測結果からも裏付けされました。

その後、第二次世界大戦後に核融合を実用化させる研究が米国、旧ソ連、英国で開始され、その後先進各国にも広まり、下記2つの技術に応用されました。

①応用例の1つ目は、「水素爆弾」です。 水素爆弾の仕組みは太陽と同じく「核融合」です。(これは好ましくない応用例です)

ただし、太陽を水素爆弾のようなイメージでとらえる解説もありますが、ちょっとイメージが違うように思います。

太陽の核融合は水素爆弾と比較すると、とても反応が緩やかだからです。(最初の水素の原子核同士の核融合反応が起きにくいため)

そのため、太陽の場合、水素の燃料が多いというのもありますが、核融合が120億年も続く中で、現在は38%の46億年がやっと経過しています。(寿命の約4割まで経過)

一方、水素爆弾の場合は、太陽の核融合とは違って同位体である「重水素の原子核」(陽子1個+中性子が1個)と「三重水素の原子核」(陽子1個+中性子が2個)を燃料に使って(緩やかではない)核融合をさせてヘリウムに変化させます。(太陽のように普通の水素から核融合をさせようとすると、反応が緩やか過ぎて実用化できないらしい)

②応用例の2つ目は、原子力発電に変わる発電として、核融合発電(核融合炉)を世界中で研究開発している点です。 しかし、色々技術的な課題があり、まだ実用化に至っていません。(これは好ましい応用例です)

核融合炉も水素爆弾と同じ燃料の「重水素の原子核」と「三重水素の原子核」を使用しますが、発電として安全に稼働できるよう工夫されているようです。

核融合によって発生した熱で水を沸かして蒸気を発生させて、タービンを回し電気を発生させます。

補足として、原子力発電(原子炉)とはウラン→プルトニウムに変化する現象ですが、これは「核分裂反応」と言い、核が分裂して起こります。(原子爆弾も原子炉と同じ核分裂)

核融合(核融合発電)は核分裂(原子力発電)に比べ、非常事態でも暴走する事は無く自然に止まるし、放射線もほどんど出さないというメリットがあり、約4倍も発生するエネルギー量が多い(発電効率が高い)です。(核融合発電も、原子力発電もCO2を排出しないという共通メリットはあります)

そして水素燃料1グラムから核融合で得られるエネルギー量=石油8トン分を燃やすエネルギー量に相当しますので燃えるという燃焼反応よりも核融合が、いかに凄いかがわかります。

「水素」は燃焼反応で(燃やして)使うこともできるし、核融合の燃料として使うこともできるし、(今回触れませんでしたが)燃料電池として電気を取り出すこともできる(いずれも環境を汚さない)便利な物質です。

 

最後に、太陽の核融合は水素→ヘリウムに変わる反応ですが、水素の燃料が尽きてくるとヘリウムだらけになり、また別の原子へと変化する新たな核融合が起こります。

それは、恒星の質量によって違う運命をたどるのですが、これはまた次回以降に解説します。

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