太陽系の一生~宇宙はリサイクル:astronomy007

宇宙は完全な真空ではない?

事務・受付担当の「さいたまあちゃん」です。

前回は、「太陽を含む恒星が光る仕組みと環境問題」ついて解説しました。

今回は、「太陽系(恒星)の一生」と、これに関連して「宇宙はリサイクルされている」について解説していこうと思います。

 

宇宙は全くの真空ではありません

真空に近いことには違いありませんが、「星間物質」というのが漂っています。

星間物質は「水素とヘリウム」を主成分(99%)としている「星間ガス」と、その他1%岩石成分で「氷、炭素、ケイ素、鉄」などを含む微粒子である(チリ):正式名=「宇宙塵(星間塵)」で出来ています。

星間物質の濃度は場所によってかなりの差があります。

銀河系内(各銀河内)の場合は平均で1立方センチメートルあたり、水素原子1個程度(1個/cm3)です(それでも、実験室で人工的に作るよりも真空度が高いレベルです)が、「星間雲(星雲)」という濃い場所だと濃度はその1000倍(1000個/cm3)になります。 そして銀河の外(銀河と銀河の間)であれば、逆に濃度はその10万分の1程度(0.00001個/cm3)になるとされています。

そして、銀河系内(各銀河内)では、星間物質の濃度にムラがあり星間雲(星雲)のような濃い場所が所々存在し、その量は銀河の全質量の1割も占めているとされています。

では、星間物質はどこからやってきたのでしょうか?

宇宙はリサイクルされている!

実は、全宇宙にある恒星や惑星の材料はリサイクルされているのです。(人工的ではなく、自然現象)

それは星間物質の基は、恒星が核融合の燃料を使い果たし寿命を迎えて膨らみ、それが周囲に拡散して残された残留物であるからです。

そして、宇宙に拡散した星間物質は濃度が濃い所が次第に重力で集まっていき、星間雲となり、そこから惑星系(恒星の周りを惑星がまわる太陽系のようなもの)が誕生します。

つまり、リサイクルされているという事になります。

この部分を私たちの太陽系を例として、順を追って解説していきます。

星間物質⇒原始太陽系へ

星間物質の濃い所が星間雲(星雲)となります。 この現象は、地上で水蒸気が集まって雲ができるのと似ています。

②星間雲(星雲)の濃度が濃くなると、重力が強くなり収縮を始めます。

③収縮によってエネルギーが狭い範囲に押し込まれるため、中心部が高温になると同時に赤外線を発するようになります。 この状態を「原始星」と言います。(太陽の場合は原始太陽といい、それは今から約46億年前で、その大きさは現在の太陽の5倍も大きかった)

④同時に原始太陽の周りには星間雲(星雲)の濃度が高まって、その成分のガスと塵が円盤状に集まって回転を始めます。

⑤中心部の温度がさらに上がると「水素の核融合反応」が起こって膨大なエネルギーを放つようになり太陽(恒星)が誕生します。 この状態を「主系列星」と言います。(原始太陽から0.1億年でこの状態になる)

⑥太陽を中心としたガスと塵の円盤内では、もともと砂粒のように小さかった塵が合体して巨大化し、直径数kmの微惑星を沢山作っていき、さらに合体と衝突を繰り返していき、今の惑星の元である「原始惑星」になります。

⑦原始惑星がさらに合体と衝突を繰り返すと、惑星になるのですが、太陽からの距離によって惑星の種類が異なってきます。

原始太陽系⇒太陽系へ

1)太陽から比較的近い位置にある惑星は「地球型惑星(岩石惑星)」といい、主に岩石で出来た惑星が出来ます。

これに当てはまるのが、水星、金星、地球、火星です。

太陽に近い場所では星間ガスの成分(水素)は太陽の材料として太陽に集まり、残った塵は太陽の熱で水分が蒸発し、岩石成分が残るためにこのタイプの惑星が出来ます。

2)太陽から比較的遠い位置にある惑星は「木星型惑星(巨大ガス惑星)」といい、岩石の核はありますが、それを取り巻く外側には分厚い気体水素の層(浅い部分)や液体水素の層(深い部分)が存在する惑星が出来ます。(地球の場合は大気の層がリンゴの皮のように薄いが、木星型惑星は大気層が惑星の大きさの大部分を占める)

これに当てはまるのが、木星、土星です。

太陽から離れると、太陽の重力の影響も弱まり、星間ガスの成分(水素)は惑星にも集まります。 これによって木星や土星のような巨大なガス惑星ができます。

補足として、木星型惑星のような巨大ガス惑星にある分厚い水素は、もっと質量(水素の量)があれば中心で核融合を起こして恒星になったかもしれません。

特に木星は、太陽になり損ねた惑星とも言われています。(といっても、木星の100倍の質量=水素の量がないと恒星になれない)

3)太陽からさらに遠い位置にある惑星は「木星型惑星(巨大氷惑星)」といい、2)に加えて分厚い氷の層を持った惑星が出来ます。

これに当てはまるのが、天王星、海王星です。

太陽からさらに離れると、星間ガスの成分も2)同様に残っていますが、多くは木星や土星に奪われているために、それほど大きくならないガス惑星ができます。 さらに塵の一部である氷も太陽から離れているため蒸発せずに残っているので、これらの惑星の材料となり、天王星や海王星のようなガス(水素)+氷の惑星ができます。

補足として、海王星のさらに外側には彗星(すいせい=別名:ほうき星)が誕生した巣(オールトの雲:太陽を中心に1.5光年あたりをとりまく)があります。

ここから太陽に楕円軌道で接近すると、アニメ「君の名は。」や映画「ディープインパクト」で出てくる彗星のように尾をたなびく天体となるのですが、彗星の本体はほぼ氷で出来ています

太陽系の最後

現在の太陽は質量の大きさで計算すると120億年の寿命がもともとあり、現在は38%の46億年が経過したところです。(寿命とは何らかの核融合で恒星として輝ける期間)

しかし、今から10億年後(誕生から56億年後)には水素の核融合によって中心核がヘリウムだらけになると、太陽は膨張を始めます。(詳しくは別途)

これにより、その頃には地球の平均気温が高まりすぎて海は干上がり、生物が住めない環境になると予想されています。(CO2による地球温暖化の影響に関係なく)

そして、今から60億年後(誕生から約100億年後)には、太陽の直径は水星と金星を飲み込んで、地球軌道まで迫るくらいまで膨張します。(大きく膨張した恒星を「赤色巨星」という)

最終的には、ヘリウム⇒炭素と酸素になる新たな核融合が始まりますが、それによって中心核が炭素と酸素だらけになると、太陽の場合はもうこれ以上核融合ができなくなり、質量の半分は縮んでいきます。(核融合は外側へ広がる力を生み出すので、それが弱まると重力に負けるため)

同時にその過程で太陽の質量の残り半分は宇宙空間に拡散されていきます。

 

縮んだ部分は白色矮星(はくしょくわいせい)となり、これは核融合が停止して余熱だけで淡く光る恒星の残骸です。

白色矮星は、元の太陽質量の半分が地球サイズくらいに圧縮されますので密度はとてつもなく高く、1cm3あたり1トン以上の重さがあります。

 

一方、周囲に拡散したガスは球体状に広がって「惑星状星雲」となります。(用語の由来:性能の低い望遠鏡で見ると、全体がまるで惑星のように見えるから)

惑星状星雲の成分は主に水素やヘリウムガスなので、これがまた星間物質の一部となって宇宙を漂い、それがまた新しい惑星系の誕生の基になるわけです。

つまり、「星の材料はリサイクルされている」という事です。(惑星の基になる、水素やヘリウム以外の元素は、塵としてどのように宇宙に拡散するかはまた次回で解説します)

↓恒星が寿命を迎えた後の残骸とはいえ、とても美しいです。(惑星状星雲は、中心の白色矮星が放つ紫外線を受けて水素やヘリウムがプラズマ化して光るという)

↑この画像は「こと座にある有名な惑星状星雲のM57:距離2600光年」

「♪何億光年輝く星にも寿命があると、教えてくれたのはあなたでした」(山口百恵さんの「さよならの向こう側」の歌詞より)

残念ながら、太陽系にも寿命があるのです。

それまでに人類の子孫はいるとは思えませんが、どんな形態であれ、科学力で太陽系を脱出して生きながらえているといいですよね。

太陽の場合はこのような一生ですが、恒星の一生は生まれた当時の質量によってその運命は大きく変わります。  これについては次回に解説します。

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