全ての景色は過去の姿:astronomy002

2つのタイムラグ

事務・受付担当の「さいたまあちゃん」です。

前回は、大きさの違う太陽と月が見かけ上、偶然に同じ大きさに見えるミステリーについて書きました。

今回は、日常的に起こる「2つのタイムラグ」と「宇宙の距離の単位」について解説します。

私達が目で物が見えるというのは、下記の2つのパターンがあります。

A ⇒光を発しているもの
B ⇒Aからの反射で光っているもの

※光が可視光(人間の目が認識できる波長)であることが条件

例えば、100km離れた場所から富士山を見るとしましょう。
東京や埼玉の一部でも空気が澄んでいると山頂付近が見えることがあります。

この場合、目で見る富士山の姿は厳密的に現在ではなく、0.18033秒~0.20033秒前の過去の姿として見えます。

しかしながら、人間にはコンマ何秒遅れ程度はリアルタイムとして感じるので、そのように感じられないだけなのです。

富士山の姿が目の網膜に到達すると、視神経が電気信号として脳に伝え、脳がそれを画像処理して「富士山」だと認識できるまでにかかる(上図の②)タイムラグが、0.18秒~0.20秒だからです。(数値に幅があるのは、個人差によるもの)

そして、残り共通する0.00033秒のタイムラグは何かというと、これが今回の本題となる部分であり、太陽光が富士山に反射し、それが網膜に届までにかかる(上図の①)タイムラグです。(このタイムラグには個人差は無い)

つまり、秒速約30万km(正確には、秒速29万9792.458km)の速度であるでも100km進むのに3000分の1秒=0.00033秒かかってしまうという事です。

これは、言い換えると、3m手前にいる相手を見る時も(脳の反応時間を除いても)光の速さによるタイムラグは1億分の1秒発生するので、過去の姿を見ていることになります。

したがって、「全ての景色は過去の姿」を見ていることになるのです。

ただし、過去の姿が見えるだけであり、過去にタイムスリップするわけではないです。

「この程度なら、どうでもいいことでは?」

と当然思うでしょう。

ところが、これが無視できなくなるのが宇宙の広さなのです。

タイムラグが無視できない「お前はもう○○でいる?」

例えば、

1)月の光は、1.3秒遅れ

2)太陽の光は、8分19秒遅れ

3)火星の光は、4分21秒遅れ

4)海王星の光は、4時間10分遅れ…>太陽系で最も遠い惑星

で光が届くわけです。(※平均距離で計算)

これに従うと、太陽がこの瞬間に突然消えたとしても地球から見ると、8分19秒間は何事もなく存在しているように見えて、光と暖かさも継続します。 

不思議なことに太陽からの引力(重力)も光の速さなので同じ時間継続します。
(その後は地球は公転軌道から外れて宇宙を放浪するようになり、太陽がないので赤道でも北極や南極並の気温になるという悲惨な結果に)

言い換えると、太陽は常に8分19秒前の過去の姿を私たちは見ていることになるわけです。

何故こんなに時間がかかるのか?は前回も説明した通り、太陽がとても遠い場所にあるからです。(地球と月までの400倍の距離=約1億5千万km)

宇宙の距離の単位

天文学では、光の伝わる速さを距離の単位としてよく利用します。(宇宙は広いので、kmを使うと数字が大きくなりすぎて、わかりづらいから)

例えば、月までは1.3秒かかるので、「1.3光秒」と言い、太陽までは「8光分19光秒」という風に時間の単位の前に「光」をつけて距離を表します。

時間のように見えても、距離を意味するわけです。

しかし、これくらいの距離では「光~」という距離の単位はあまり使われず、光の速さで1年以上かかるほどの遠い距離にある天体を「○○光年」と表すのが普通です。

1光年=約9兆5千億km です。

ちなみに、太陽系内であれば光年は使わずに、太陽と地球の距離を単位として「1天文単位=1au」とするのが普通で、1au=約1億5千万kmになります。(海王星までは、30au=太陽から地球の30倍の距離となります)

1光年=約6万3千au(天文単位)

宇宙の広さについての詳細は、別の機会で詳しく説明します。(地球から観測可能な半径でも、465億光年もある)

※これ以外にも、1pc(パーセク)=約3.2616光年 という距離の単位もあります。(詳細は割愛)

※夜空に輝く星々は何十光年、何百光年、何千光年以上離れているので、年老いた星は現在見えていても実際はすでに寿命が来て消滅している可能性もあります。

有名な歌詞で・・・

余談ですが・・・山口百恵さんの「さよならの向う側」の歌詞の中に

何億光年輝く星にも寿命があると、教えてくれたのはあなたでした」というのがありましたが、

本当は光年は距離の単位なので、輝くとか、寿命とか、時間を表すものとは結び付かないので、()を使って意味が合うように補完するとこのようになるのだろうと思います。

「何億光年(先で何億年も)輝く星にも寿命がある」

もしも、()の省略がなくとも通じるようにメロディに合わせて歌詞を変えてみると、

何億年も、輝く星にも寿命がある

となりますが、「遠い距離にあるという」距離感がなくなってしまうので難しいですね。

科学