1+1=2ではない?~特殊相対性理論:astronomy012
もくじ
膨張について再考
事務・受付担当の「さいたまあちゃん」です。
前回は、「宇宙は膨張している」について解説しました。
今回は、その大発見から、ビッグバン理論について解説していこうと思いましたが、大事な事を端折ってしまったことに気づきましたので予定を変更します。
前回の説明で、ハッブルの発見より「宇宙は膨張をしている」が導かれたという解説をしました。 そして、その根拠として2つの事を挙げました。
1 膨張と考えれば、地球が宇宙の中心であるという不自然さを考えなくてよい。
2 膨張と考えれば、遠くの銀河が光速に近い遠ざかり方に見えても不自然ではなくなる。
さらに、上記2つのわかりやすいイメージとして、膨らむ葡萄パンで説明しました。
とは言っても、何もない宇宙空間(真空)が膨張しているの根拠がしっくりとこない方が多いと思います。
空間はパン生地のように実体があるわけではないからです。
空間は伸び縮みする
膨張を考えるにあたり、そもそも空間とは何か?という疑問が沸き起ります。
冒頭で説明を端折ったと書きましたが、その部分はあの有名なアインシュタインの相対性理論の事です。
アインシュタインの相対性理論には、1905年に発表された「特殊相対性理論」と、1915~1916年に発表された「一般相対性理論」の2つがあります。
前回、きっかけとして1910年のスライファーの発見(全ての銀河が遠ざかっている)と1929年のハッブルの発見(距離に比例して銀河は速く遠ざかる)としましたが、その間に発表されたアインシュタインの「一般相対性理論」の発見も大きく関係しています。
アインシュタインはこれらの相対性理論を思考実験(実際に実験をするのではなく頭の中だけで実験を行う)によって発見しました、(すごいですよね)
この理論によって、空間も時間も不変ではなく伸び縮みするものであるというのが示されました。
つまり、空間は伸び縮みする⇒宇宙は膨張も収縮もありうる、という考え方が根拠となっています。
一般相対性理論を解説する前に、その基礎となった特殊相対性理論を少しづつ解説していきます。
1+1=2とは限らない?
小学校の算数で一番最初に習うのは、1+1=2であるという事です。
さらに、高校の物理で一番最初に習うのも、1+1=2であるという事です。
高校でそんなの習ったかな? ⇒それは速度の合成式の事です。
例えば、時速40kmの車と時速60kmの車がすれ違うとします。
この場合、見かけの速度はお互いに次の式が成り立ち、時速100kmで見える事になります。
式で表すとこうです。
Vab=Va+Vb・・・①ニュートン力学(速度の合成の式)
式:40+60=100
当たり前ですね。 つまり1+1=2であるという単純な足し算で計算できます。 これを物理ではニュートン力学の速度合成式と言います。
ところが、相対性理論で計算すると、時速99.9999999999998kmになります。 このように物理では1+1=2にならない場合があります。
式で表すとこうです。(c=光速を時速に換算=1079252849km/h)
Vab=(Va+Vb)÷(1+Va×Vb÷Cの2乗)・・・②相対性理論(速度の合成の式)
式:(40+60)÷(1+40×60÷1079252849の2乗)=99.9999999999998
次回以降に解説する観測結果から、相対性理論の方が正しいことが実証されているので、高校物理の教科書が厳密には正しくないことになります。
しかし、日常生活では時速99.9999999999998kmを時速100kmと考えても全く差し支えありません。(大学入試でもこれで良い)
なので、計算が簡単な高校物理のニュートン力学(速度の合成の式)の式で十分なのです。
言い換えると、高校で習うニュートン力学(速度合成以外も含む)は相対性理論の近似値だったという結論になります。
驚きですよね?
相対性理論を使う場面
では、わざわざ相対性理論を使う必要性もないのでは? と思うかもしれませんが、これが日常ではない速い速度だと必要になります。
例えば、光速の60%と光速の100%がすれ違うとどうでしょう?(または、光速の60%の宇宙船から発した光の速さの例でも同じです)
ニュートン力学では、
Vab=Va+Vb
60+100=光速の160% になってしまいます。
しかし、光速を超えることは観測結果からあり得ないことが分かっています。
これを相対性理論の式に当てはめると、(c=光速を%に換算=100%)
Vab=(Va+Vb)÷(1+Va×Vb÷Cの2乗)
(60+100)÷(1+60×100÷100の2乗)=光速の100%
光速の100%つまり、光速を超えることはありません。
まとめると、日常の低速では近似値が全く問題にならないので式が簡単なニュートン力学で十分なのですが、
非日常の高速になると、近似値どころか間違った答えになるので、相対性理論でないと計算できなくなります。
ただし、前回も触れましたが唯一、光の速度を超えて良いのは宇宙の膨張速度です。 混乱しそうですがこれに関しては速度合成式がどちらも成り立ちません。 膨張に乗っかって離れて行く銀河は空間に対して移動しているわけではないからです。
これが宇宙の膨張とどう関係するかは、一般相対性理論の解説までしばらくお待ちください。
・・・次回へと続きます。